朝、学校に行けない~起立性調整障害(OD)~
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朝、とにかく体の調子が悪くて起きられないことが特徴の起立性調整障害(OD)ですが、IBS(過敏性腸症候群)という疾患と睡眠の関係を調査した論文が参考になるかもしれません。

【IBS(過敏性腸症候群)と睡眠障害】
首都圏で行った調査によると43%の人に睡眠障害が認められたということですが、IBS(過敏性腸症候群)の人は健康な人よりもっと睡眠障害が多いとされています。
昨年のThe American Journal of Gastroenterology誌1月号(Topan R, et al. Am J Gastroenterol. 2024;119:155-64.)に掲載された論文によると、前日の夜に「よく眠れた」と感じた日には、IBS(過敏性腸症候群)の消化器症状が軽減する傾向が示されました。一方で日中の消化器症状とその日の睡眠の質との間に関連は示されませんでした。
以前より睡眠の質がIBS(過敏性腸症候群)の消化器症状に影響することが示唆されてきましたが、これまでのところIBS(過敏性腸症候群)の消化器症状と睡眠が関連するかどうか結論は得られていませんでした。
しかし、今回の論文の著者らはRome IV基準でIBSと診断された英国内のIBS患者80人を対象に、睡眠の主観的・客観的指標と消化器症状との関連を調べました。
その結果「よく眠れた」という回答を得られた翌日は、「腹痛」の軽減が認められましたが、一方では日中の腹痛の程度が軽かったり全くなかったからといって、その日よく眠れるかどうかに関連を見出すことはできませんでした。
また同様に「よく眠れた」という回答が得られた翌日は、「下部消化器症状(膨満感や残便感)」の軽減が認められましたが、一方では日中の下部消化器症状が軽かったり全くなかったからといって、その日よく眠れるかどうかには関連を見出すことはできなかったということです。
この結果から著者らは、患者が自らの睡眠に関してどうとらえているかが、翌日の消化器症状に最も大きく影響する可能性があると結論付け、睡眠は消化器症状に影響する生活習慣の1つとみなすべきであると指摘しています。
よく寝られたと感じることが大切
このようにIBS(過敏性腸症候群)の診療において睡眠の質を評価し、必要に応じて治療をし、「よく眠れた」という実感を得てもらうことが大変重要であると考えらます。
睡眠ホルモンであるメラトニンは「幸福ホルモン」とも呼ばれる「セロトニン」から作られますが、このセロトニンの95%は腸にあるクロム親和性細胞から作られます。腸内細菌の乱れがあるとこのセロトニン産生にも影響を及ぼし、その結果として不安や抑うつ、不眠症状の原因となることが知られています。
ですから、日頃からの腸内環境を整える取り組みがより良い睡眠にもとても重要なのです。

【当院でおすすめしている睡眠のための工夫】
1. 自分に合った睡眠時間を確保
睡眠は体質や年齢など個人的な要因に影響されるため、その人が何時間眠れば良いのかという絶対的な基準はありません。
厚生労働省の作成した「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、「成人は6時間以上」、「小学生は9時間~12時間」「高齢者は個人の体調や生活状況に合わせた時間」と示されていますが、個人的には成人でも7時間以上の睡眠時間を確保する方がいいと思います。しかし、入眠困難がなく朝の目覚めも良くて日中の眠気もない場合、睡眠時間に関係なく、おおむね質の高い睡眠が取れていると考えて良いでしょう。
2. 朝日を浴びて体内時計をリセット
私たちの体には体内時計(概日リズム)が備わっていて、朝起きて夜に寝るというリズムに合わせて、体温や血圧、細胞の再生やホルモン分泌が調整されています。
生活習慣の乱れた体内時計のリズムをリセットしてくれるのが「朝日」です。
特に日の出前後の青白い光は、脳の「松果体」で感知されれることで睡眠ホルモン「メラトニン」が減少し、目を覚ます働きのある「セロトニン」の量を増やします。この反応の約14時間後には再びメラトニンの分泌がピークとなり眠気を起こします。
3. 寝る直前にスマホやPCは見ない
パソコンやスマホからの光には、睡眠ホルモン「メラトニン」を抑制する「ブルーライト」が含まれています。これを多く浴びると寝つきを悪くするだけでなく、体内時計を乱す要因にもなります。寝る前の1時間は、テレビやパソコン、スマホなどを見ない習慣を身に付けましょう。
4. 運動習慣を身に付ける
ウォーキングやジョギングなどの軽い有酸素運動を習慣的に続けることで、寝つきや睡眠の質の改善が期待できます。ストレッチや腹式呼吸なども良いとされています。ただし、激しい運動は逆効果になるので要注意。運動やストレッチは床に就く1~2時間前までに行うのが良いとされています。
5. ゆっくり入浴して体の深部を温める
就寝時間の1~2時間前にゆっくりと入浴することがおすすめです。入浴により深部体温が上昇しますが、お風呂から出た後に急低下することによって眠気を引き起こします。興奮した自律神経を落ち着かせる働きのあるマグネシウムを多く含んだ入浴剤も効果的です。入浴は眠気が起こるタイミングから逆算すると床に就く1〜2時間前が理想的。
6. 睡眠に重要な栄養素を摂る
睡眠の質を上げるには3つのアミノ酸が重要です。
・トリプトファン
メラトニンの材料となるトリプトファンが含まれる食材としてよく知られているのが牛乳やチーズなどの乳製品ですが、当院では腸内環境の観点から積極的に乳製品の摂取はお薦めしていません。トリプトファンはレバー、大豆製品、ナッツ類にも多く含まれますからこれらの食材を意識して、できれば朝食に摂取することが良いでしょう。
・グリシン
グリシンはエビやホタテなどの魚介類に多く含まれ、睡眠へスムーズに入りやすく、睡眠の質を高める効果が期待できます。
・GABA
GABAはトマトやバナナ、ヨーグルト、玄米などの穀類に含まれ、興奮した神経を落ち着かせ、副交感神経を活性化させて、睡眠の質を高める効果が期待できます。
・ビタミンB群
睡眠に関連するセロトニンやメラトニンといった神経伝達物質は補酵素であるビタミンB群が不足するとうまく産生できません。基本は食事からの摂取ですが、必要に応じてサプリメントなどからビタミンB群をしっかり摂取することで睡眠の質を向上させます。
7. カフェインや喫煙を控える
カフェインに覚醒作用があることはよく知られていますが、特に感受性の高い人は要注意です。どうしても欲しい場合は午前中に摂取するように心がけましょう。
IBS(過敏性腸症候群)やSIBO(小腸内細菌異常増殖症)の方の中には、カフェインで日中の腹部症状が悪化する方が多いため、やはりカフェインを控えておく方がいいでしょう。また、タバコに含まれるニコチンは中枢神経系に刺激を与え、脳を覚醒させてしまいますので控えることが重要です。
8. 「光」をコントロールする
睡眠中の明るさはできる限り暗い方が良いとされています。眠る前に強い光を浴びることはメラトニンを抑制するため避けることが望ましいですが、光の色にも眠りやすい環境をつくる色があります。特にオレンジ色などの暖色系の色は、光のエネルギー量が少なく、「メラトニン」の分泌を妨げにくいとされています。
明るすぎる照明は、メラトニンの分泌を抑制するだけでなく、脳内の覚醒物質とされる「オレキシン」を活性化させてしまいます。睡眠不足の原因の一つであるスマホやパソコンのブルーライトよりも、実は大きな影響を及ぼしているのではないかとされています。
起立性調整障害(OD)で労わるべきは「腸」
起立性調整障害(OD)の発症する原因はいまだに不明とされておりますが、「セロトニン」をしっかりと作り出せるように腸内環境を整えてあげると復調の兆しをつかめるかもしれません。
当院にお越しになられた方は、腸を整える施術を続けていくうちに、お腹の冷えがなくなり、朝食が食べられるようになり、下痢がなくなり、体調が良くなることで睡眠のリズムが整ってきたなどのお声をいただいています。
(僕の技量の問題か、効果に個人差があり、なかなか効果の見られなかった方もいます)

体内環境は直ぐには変わってくれません。
なかなか成果は出ないかもしれません。
ですが、出来ることから実行すればいつか体が、その努力に答えてくれる日がやってくると思ってます。

体調・体質の改善に鍼灸をぜひご活用ください。
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